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 <取材レポート> インターコンチネンタル・パリ ル・グランホテル シェフパティシエ ドミニク・コスタ氏来日特別インタビュー

2017/5/30

2017年5月8日から11日までの4日間、インターコンチネンタル・パリ ル・グランホテルのシェフパティシエ ドミニク・コスタ氏が来日し、エレガンス溢れる14種のルセットが40人を超える受講者の前で披露されました。(第48回現代フランス製菓技術特別講習会 主催:フランスを識る会)

世界からその手腕を高く評価される一流パティシエのアイディアの源泉や仕事スタイルについて取材しました。

17歳の時、高校のインターンシップでレストランでの研修をしたことがきっかけで料理の道へ進んだというドミニク氏。パティシエとしてキャリアを積む転機は何だったのでしょうか?

ドミニク氏(以下D)
料理人として働いていたレストランでシェフパティシエが辞めてしまい、次のシェフが入るまで任せてもらったことがきっかけでした。やっていくうちにデザートの奥深さに魅了されパティシエとしてやっていく事を決めました。
パティシエとしての多くはホテルで学びましたが、僕が若かった頃の当時のホテルでの勤務は、朝早くから夜遅くまで、寝る暇もなく働く環境で仕事一筋の生活を送っていました。心身ともにとても大変な時期でしたが、今思うとその頃に最も多くを学び、今の自分の糧になっていると感じます。

Q 今回の講習会ではドミニク氏のアイディア溢れるフランス菓子のルセットを披露されていますが、デザートのイメージはどのように膨らませていますか?
D 新しくできたお店などにも行きますが、パティシエ仲間で自分たちが作ったデザートを持ち寄る会を開催したりもします。自分では思いつかない組み合わせなども多く、一流の仲間たちから常に刺激を受けていることがインスピレーションに繋がっています。
昔のパティシエは今のようにルセットを公表したり、紙に書いて配ったりなどはしませんでした。門外不出というか、自分の味を真似されたくないという時代だったのだと思います。ですが、私たちの少し上の世代から、自分のルセットを仲間同士で見せあったり、アドバイスや情報交換を行うような自由な雰囲気に変わってきました。こうしたことからも時代の変化を感じますね。
日本に講習できたときに一緒に働くパティシエの多くは技術が高く優秀です。次に来たときにはぜひ日本人パティシエたちとデザートを持ち寄ってアドバイスや意見交換をしてみたいですね。

季節のフルーツを取り入れたデザートが得意というドミニク氏。現職ではホテルの看板メニューであるミルフィーユに改良を加え、その人気を不動のものにした実績を持っています。ドミニク氏が考えるフランス菓子の魅力について教えてもらいました。

D フランスでは日本と違って、それぞれのフルーツが旬の時期以外に出回ることがないので、“季節を感じさせるデザート”というものを非常に大切に考えていますし、常に探究しています。
20年以上、この業界にいますが、フランス菓子の変化も感じています。
ホテルにおいても、昔はフランス菓子というと重くて甘いものが多かったですが、最近ではホテルで活躍する女性パティシエも増えてきているので、これまでにはなかった女性らしいタッチのデザインや、健康や美容に気を使った低糖質のものなどをよく目にするようになってきました働き手の感性や時代のニーズに合わせて変化があることも魅力の1つだと思います。

最後に、日本の若手パティシエに向けてドミニク氏からメッセージをいただきました。

D まずはなんでも試して、いろいろな物を味わってください!!
自分の可能性を広げるためにも、この一言をとても大切にしています。

フランスではスターシェフに憧れる若手は多い一方で、華やかなイメージとは違い厳しい修業にギャップを感じる人も多くいます。
ですが、諦めずに頑張るからこそ得るものが大きく、更に腕を磨いて頑張ろうと思えるものです。
実は私も新しい挑戦をするために、この夏からペニンシュラ パリでシェフパティシエとして働くことが決まっています。挑戦すればその分結果もついてくる、それがパティシエの仕事の醍醐味です。

ドミニク・コスタ氏 (Monsieur Dominique COSTA)
1862年皇帝ナポレオン3世の意志により建造された歴史あるインターコンチネンタル パリ ル グランのシェフ・パティシエ、<レストラン・カフェ・ド・ラ・ペ>をはじめ、バンケット、ビュッフェ、カクテルに関するパティスリーの制作・デザイン総責任者

《略 歴》
  • 1978年11月生まれ
  • 1995年~1999年:ホテル・デュ・ラック・ダンギャン・レ・バン、グランド・ホテル・アダンギャン・レ・バン、レストラン・ル・キャレ・クレヴェール、ホテル・パリ・K・パレス、シェ・レイニール・マルケッティ等でフランス料理とフランス菓子の研鑽を積む
  • 1999年~2000年:ホテル・ルテシア(パリ)でドゥミ・シェフ・ド・パティシエ
  • 2000年~2002年:ホテル・ルテシアでシェフ・ド・パルティ・パティシエ(パティスリーのミ・ザン・プラスの責任者)
  • 2002年~2002年:ホテル・モン・ロワイヤルでシェフ・パティシエ
  • 2002年~2003年:ホテル・ボラボラ・ニュイ・リゾート・アンド・スパでセコンド・パティシエ
  • 2003年~2004年:シャトー・ド・ファヴェルジュ・ド・ラ・トゥ―ル(4 星)でシェフ・パティシエ
  • 2004年~2007年:ピュブリシス(アラン・デュカス・グループ、シャンゼリゼ通り)でシェフ・パティシエ
  • 2007年~2008年:レストラン・ラ・トゥール・エッフェルでシェフ・パティシエ(アラン・デュカスグループ)
  • 2008年~2010年:ホテル・ルテシアでシェフ・パティシエ
  • 2010年5月~現在:インターコンチネンタル・パリ ル・グラン ホテルでシェフ・パティシエとして、18 名のパティシエを率いて、ホテルのパティスリー、デセール総責任者としてその手腕は世界から高く称賛されている


<ドミニクシェフ(中央)
パティシエ仲間のレダ氏(左)とヴィクトール氏(右)も一緒に来日>



<ドミニク氏の熱意溢れる指導が会場全体を盛り上げてます。写真のタルトレット・バスク・ショコラは試食でも人気の1つでした。>




<40人を超える参加者は、ドミニク氏に負けじと真剣な眼差しで受講>




<ドミニク氏直伝のマドレーヌ・ドゥ・コメルシー>